新型コロナウィルスの感染が広がる中、消毒用品が足りない状況が続いてますね。
当院でも、消毒用アルコールの在庫がそろそろ底をつきそうな状況です。。。
消毒用アルコールを医療用具販売業者に注文してはいますが、注文が殺到していて、いつ届くのかすらはっきりしない異常事態です(^^;
消毒用アルコールの在庫が少なくなる中、次亜塩素酸水も利用し始めましたが、次亜塩素酸水ですと乾きが悪いのが難点です。。。
揮発性の高いアルコールは鍼灸の施術では欠かせないものであり、アルコール不足に困っておりました。
そんな折、鍼灸師・薬剤師である友人が、市販されている焼酎を蒸留して消毒用アルコールをつくる方法を考案してくれたのです(友人のブログの情報は後述)!
やり方を見てみると、道具を準備する手間が多少必要ですが、やれそうなのでやってみることにしました ♪
準備する道具・材料
まずは、道具・材料を準備しなければなりません。
1、格安の焼酎(アルコール25%)
2、耐熱性のあるボトル
3、シリコンチューブ(1m×2)
4、電気コンロ
5、鍋(電気コンロに対応するタイプ)
6、陶器の皿
7、100ml量れるビーカー(もしくは計量カップ)
8、食品ラップ
9、水を張るためのステンレストレー
10、布巾(手ぬぐい)
11、タコ糸
12、針金、輪ゴム
13、保冷剤
14、扇風機(必須ではありませんが、あると効果的)
15、重曹を少々(ボトル、フタ、チューブの消毒用)
16、ステンレストレーを載せる台や箱(ステンレストレーの高さを確保するためのもの)
順次、詳しく説明していきます。
焼酎について
約100mlの消毒用アルコールを蒸留するのに、焼酎400mlが必要となるので、焼酎は多めに2700ml用意しました。
これで、約600mlの消毒用アルコールをつくることができます!
耐熱性のあるボトルについて
耐熱性のある素材としては、ガラス、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)はOK。ペットボトルはNGです。
耐熱性という意味では、材質はガラスがベストですが、丁度良いガラスボトルが手元になかったので、消毒用アルコールが入っていたボトルを使うことに。 このボトルの材質は、本体がポリプロピレン(PP)でフタがポリエチレン(PE)です。
シリコンチューブについて
ここで「シリコン」チューブを選んだ理由は「耐熱性」があるから。
ポリ塩化ビニールのチューブ(水槽のエアーポンプなどで使われているもの)は耐熱性がないのでNGです。
ここでは、外径5㎜、内径3㎜のシリコンチューブを使いました。
コンロについて
最初はキッチンのガスコンロで蒸留しようと思いましたが、鍋に張ったラップがコンロの火で溶けてしまう畏れがあったので、電気コンロを準備しました。
準備としては、シリコンチューブを通すために、このボトルのフタに穴を開けるのに苦労しました。
鍼灸師の友人は、穴を開けるために電気ドリルを使っていましたが、私は電気ドリルを持っていません。。。
とりあえず、ドライバーセットの中のドリル状のドライバーで穴を開けようと考えましたが、なかなか上手く穴を開けられません。。。
ドリル状ドライバーを使用することは断念しました(^^;
今回の作業のために わざわざ電気ドリルを買うのもいかがかと思い、何か他のやり方はないものかと思案した結果。。。
火で熱したキリでボトルのフタを溶かすようにしてボトルのフタに穴を開けました。
シリコンチューブの太さは外径5㎜(内径3㎜)なので、フタに開ける穴もそれに合わせる必要がありますが、フタとチューブの間に隙間があるとアルコールが漏れてしまうので、開ける穴は直径5㎜より気持ち小さ目にするのがポイントです!
なんとか、隙間のないようにボトルのフタに穴を開けることができました(^^)
加工が必要なのは、このボトルのフタの穴だけなので、穴が綺麗に開けられたら、準備はほぼ終わりです。
ボトル・ビーカー・チューブを煮沸消毒し(少量の重曹を加えて100℃で10分間)、よく洗浄して乾かしておきます。
これで、道具の準備は出来ました。
あとは準備した道具をセッティングしていきます ♪
道具のセッティング
1、まずは、焼酎をビーカーで正確に400ml量り、耐熱ボトルに入れます。焼酎が漏れないようにボトルのフタはしっかり締めます。
★ここで法律的な問題(←後述します)を回避するために、「次亜塩素酸水などの消毒液」を少々焼酎に混ぜておきます。
2、鍋に陶器の皿を敷いて(←ボトルを鍋の加熱から保護するため)、水を鍋の深さの半分位まで張り、ボトルを陶器の皿の上に置きます。
ボトルと鍋の間をラップを使って閉じ、熱して蒸気になった水が鍋の外に漏れないように、ボトルや鍋とラップが接する部分をタコ糸で縛っていきます。
3、シリコンチューブを水を張ったステンレストレーに浸すようにして、トレーの中に保冷剤を置き、布巾で固定します。
ここでチューブを水に浸すのは、蒸留されたアルコールの温度を下げて液体に戻す(← トレーの中の水は、ラジエーターとしての役割を果たします)ためです。
4、シリコンチューブの先をビーカーに入れ、その先をラップでビーカーに固定して蒸留したアルコールが漏れないようにします。ラップとチューブの間に隙間ができないように針金を巻いておくようにします。
念には念をいれて、ビーカーに被せたラップの裾を輪ゴムで留めておきます。
5、蒸留され液体になったアルコールがスムーズにチューブの中を進むように、ビーカーの高さと同じくらいの箱をトレーの下に置きます。
これで、道具のセッティングは終了です!
蒸留の仕方
まずは、電気コンロをの火力を強くして(5段階の5)鍋の水を沸騰させます。
鍋の水が沸騰したら、火力を弱めて(5段階の3)蒸留を進めていきます。
手持ちの電気コンロだと、温める火力を5段階の2程度だと、なかなか蒸留が進まなかったので、少し火力を強めで行いました。
蒸留を進めていくうちに、熱を帯びたアルコールがステンレストレーの中の水の温度を上げていくので、時々ステンレストレーの中の水の温度を確認し、水の温度が温くなってきたら、保冷剤を適宜取り換えてトレーの中の水温を低く保つように気を付けます。
ラジエーターとしての水の温度を低く保つと、蒸留が早く進みますし、蒸留されたアルコールの濃度を高く保つことができるので、保冷剤を使うようにしました。
また、電気コンロとステンレストレーとの間に距離をできるだけ確保して、鍋の熱がトレーの中の水の温度に出来るだけ影響しないようにします。
さらに水温を低く保つために、卓上扇風機でステンレストレーの中の水に風を送り続けます。
鍋の水の沸騰とともに、ボトルの中の焼酎の温度もあがり、蒸留が始まります!
蒸留されたアルコールが水で冷やされて液体になり、チューブの中を進んでいきます。
少しずつですが、ビーカーにアルコールが溜まっていきます。
蒸留が進み、ビーカーの中にアルコールが100ml丁度溜まったら、蒸留は終了させます。
ここで、欲を出してもっと蒸留させようとすると、アルコールの濃度が下がってしまうので、100mlまでにするのが大切です。
蒸留を終了させるときは、電気コンロの加熱を止める前にビーカーからチューブを抜くようにします。
(注:先に電気コンロの加熱を止めると蒸留されたアルコールが逆流してしまいます)
蒸留したアルコール濃度を確認します。
室温20℃で、100mlのアルコールの重さが86gだったので、濃度約73%のアルコールが出来たことになります ♪
(アルコール水溶液の密度の計算は、こちら)
最後に、密閉できる容器にアルコールを移して、作業は終了です!
蒸留の後、濃度10%ほどの焼酎が残りますが、それを再蒸留して消毒用アルコールを作るのは時間がかかり過ぎるので、料理に使うか飲んでしまうか、他の用途に使うことがよさそうです(^^)
蒸留作業を通じて気付いた注意点
2700mlの焼酎を準備したので、合計6回行い600mlのアルコールを蒸留しましたが、最初は上手く結果がでませんでした。。。
6回分の結果は、以下です(アルコール100mlにつき)
1回目: 気温22℃ 89g → 約61%
2回目: 気温21℃ 88g → 約65%
3~6回目: 気温20℃ 86g → 約73%
1回目2回目の失敗の原因は、ステンレストレーの位置が電気コンロの近くにあったので、トレーの中の水温がかなり上がり、ラジエーターの役割を果たさなかったことです。しかも1回目と2回目は、保冷剤も扇風機も使ってなかったのも水温が高くなる原因だったと思います。
そこで、3回目以降は、
1、ステンレストレーを電気コンロから出来るだけ離して設置する
2、保冷剤を数個用意して水温が上がってきたら保冷剤を取り換える
3、電気コンロの水が沸騰した後は、扇風機でトレー中の水をさらに冷やすようにする
ことを注意しました。
その結果、3回目以降は、約73%の濃度で蒸留することに成功しました!
法律的な問題点、友人への感謝
先に述べたように、アルコールを自作する上で、法律的な問題もあります。
具体的には、酒税法、薬機法(旧薬事法)、アルコール事業法、消防法の問題が生じえます。
ただ、アルコールを蒸留する前に、アルコールに少量の消毒液を加えれば「酒」ではないので、酒税法の問題は回避できます。
また、販売するのではなく、個人的に使用するためのアルコール蒸留ならば、「業として」の行為ではないので、薬機法の問題を回避できます。
アルコール事業法は、アルコール濃度90%以上のアルコールを対象としているので、ここでは問題となりません。
さらに、今回作る程度の量ならば、消防法における許可も届出も不要なので、消防法も問題ありません。
結論としては、「蒸留を始める前に、アルコールに少々の消毒液を加える」ことさえ忘れなければ、法律的問題は回避できます。
最後に、今回のアルコール蒸留の方法を考案してくれた友人の儀間達哉氏に感謝の意を表します。
ありがとうございました!!
(参考にさせて頂いた、はちみつブンブン鍼灸院の儀間氏のブログは、こちら)
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