最近、帯状疱疹で困っている方が多いとの話をよく耳にします。
コロナ禍の中、色々な原因のために免疫力が下がっているのが原因だと思われます。
そのような状況のなか、帯状疱疹由来の「ハント症候群」による顔面神経麻痺を訴えて ご来院された方の症例をご紹介したいと思います。
顔面神経麻痺には、「ハント症候群」と「ベル麻痺」があるのですが、ハント症候群の方がベル麻痺に比べると重症といわれています。
●1回目(2021.12.19)
ご来院された患者さん(以後、Sさん)は、右まぶたが麻痺して右目を閉じられなくなっており、口も左顔面に引っ張られて歪んでいました(2021.12.16頃に発症)
発症してからまだ病院での診断を受けられていない段階で当院にご来院されたので、まだベル麻痺なのかハント症候群なのか鑑別できない中での施術スタートです。
顔面神経は、「茎乳突孔」という耳のすぐ下の穴から頭蓋骨の外に出て顔面の比較的浅いところに分布しています。
そこで、まず首や耳の後下の辺りを触診してみると、予想通りかなり凝り固まって筋肉が緊張していました。
これでは、茎乳突孔から出てきた顔面神経が緊張した筋組織に圧迫されて働きが悪くなってしまいます。
肝心の顔面の状態を触診してみると、右の額・眉毛・瞼の下、右頬や唇の脇、右顎の辺りのツボの気が不足していました。
全身もざっと触診してみると、疲労のためか筋緊張が強く 気血の巡りも悪化した状態です。
そこで、まずは全身の巡りを改善するために末端から体幹へと鍼と灸を施してから、首周辺の筋緊張(特に右耳の後下あたり)を鍼で緩和し、さらに顔面の気の不足したツボ(虚したツボ)に鍼を浅く刺して気が充実するのを待ちました。
気の充実を感じられたので、鍼を抜き、1回目の施術は終了
●2回目(2021.12.22)
前回の後、右目の閉じ方がスムーズになっており、右口元の引き攣りも力を入れない状態なら改善傾向(力を入れると左にひっぱられる)。右後頭部に頭痛も発症
1回目と同様に、全身の巡りを改善する施術をした後に、後頭部・首・右耳の後下の筋緊張を鍼で改善、顔面の虚したツボに鍼を浅く刺しておいた後、まだ気が充実していないツボには、テイ鍼(←刺さない鍼)でさらに気を補い、施術終了。
●3回目(2022.1.7)
前回の施術の後、検査の結果、Sさんはハント症候群との診断受け、一時的に入院されたので、3回目の施術は年明けになった。
右耳の後下の筋緊張は改善傾向だが、まだ顔面神経麻痺の症状は1~2割しか改善できてない状態
施術方針は、前回までと同様にして施術したが、今回から顔面の虚したツボに熱量の少ない台座灸(せんねん灸)を施した。
顔面部なので灸痕が残らないように熱量を調整しながら灸を施すことに留意。
顔面部の気の不足の改善には、鍼よりも灸の方が効果的であったので、台座灸をメインにして、足りないところはテイ鍼で補う方針で施術した。
●4~7回目(2022.1.7、1.12、1.16、2.25)
3回目の施術方針を繰り返す中で、次第に顔面の歪みが改善され、7回目の施術の後、第三者から見れば、目の閉じ方も口元の歪みも ほぼ問題ないレベルに回復。
●総括
Sさんの場合、発症してから間もない段階で対処できたのがよい結果に繋がったと思われます。
顔面神経は顔面の浅いところを走行するので灸の熱が十分に届くこと、鍼よりも灸の方が虚したツボ(エネルギー不足のツボ)の状態を改善するのに適していると臨床上実感していたことから、顔面のツボには灸を施術のメインにしてみたら大きな効果を出せたと思います。
※灸は基本的に顔面部には使わないので、痕が付かないように熱量のコントロールが大切です
顔面神経麻痺は、適切なタイミングで適切な対処をすれば十分回復できる症状ですので、悲観せずに対処して頂けたら幸いです。
以下、Sさんによる施術体験談です
以下、体験談のページです
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